進撃の巨人研究所 感想・考察 

進撃の巨人の感想や考察です。

2018年07月

シガンシナ区決戦で、調査兵団は辛くもマーレの戦士達を退け、ウォール・マリアを奪還しました。
そして、そこから四年間の時間が経った訳ですが、ここでは現在判明、あるいは推測出来るパラディ島の変化を纏めていきたいと思います。

1、国という概念の定着
壁の中の人類は、壁内のみに人類が存在し、唯一の王のみが人類を統治するという世界観の中で生き続けていました。
ですが壁の外にも人類が普通に住んでいるとしり、ヒィズル国との接触を通して、国家という概念を知りました。

これはフロックの新生エルディア帝国という発言にも現れています。

パラディ島にとっての敵が意思の疎通が出来ない巨人から、人間へと変化するに当たり、一種のナショナリズムが芽生えているようですね。

2、技術の進歩
ヒィズル国や、義勇兵からの技術、兵器提供によりパラディ島の技術力も向上しているようです。
とは言え、まだ外部との接触を取り始めてから四年間。
まだ、ヒィズル国からの兵器の提供や、調査船に搭載されていた兵器の鹵獲に頼っているとは思いますが、銃器としてボルトアクションライフルを装備していたり、手榴弾のような武器を開発していたりと、軍事力の底上げは成されているようです。

3、兵団の改編
第107話でのピクシス司令の腕章などを見るに、まだ調査兵団、駐屯兵団、憲兵団、訓練兵団の四兵団編成という構造は変わっていないと思われます。
しかし壁内の巨人を排除したことで、壁に駐屯兵団を貼り付けておく必要性は無くなり、エルディア人収容区を襲撃した調査兵団にも、元駐屯兵団の兵士が参加していました。

ここから、調査兵団は主に対外戦闘を担当する兵団へと役割を変え、駐屯兵団の一部は壁の警備の重要性の低下に伴い調査兵団に編入、残りは防衛や憲兵団の補助的な役割を果たしているのでしょうか?
憲兵団は主な任務が治安維持なので、大きく形を変えずに存続していると思います。


今後の話では、現在のパラディ島について更に多くの事が語られることでしょう。




エルディア人収容区での戦いで、戦鎚の巨人が作り上げた長い柄を持つハンマーの威力は、エレンの両腕の硬質化ガードを軽く打ち抜き、進撃の巨人の頭を消し飛ばす程でした。
概算にはなりますが、角速度を用いてハンマーの威力を検証してみようと思います。

さて、高校物理では円運動における角速度ω=v/rで表されます。
r=回転半径
v=円周軌道上の速度

例えば、野球ボールを投げる運動を円運動と仮定した場合、成人男性の平均的な腕の長さr=0.74m
球速=100km/h=28m/sとすると

角速度ω=約38rad/sとなります。

これを人間が玉を投げる時の肩の角速度=ハンマーを振り下ろす時の角速度と仮定すると、戦鎚の巨人の右肩からハンマーの先端までの距離は恐らく23m程度なので

v=23×38=874m/s

ハンマーの先端は874m/sという結果になりました。

これは近代的な榴弾砲や高射砲の砲口初速に匹敵する速度です。
こんな速さで巨大なハンマーの先端が叩きつけられれば、流石にエレンの硬質化といえども、防ぎきれない筈ですね。




エルディア人収容区でパラディ島へと宣戦を布告したヴィリー・タイバーを、次の瞬間に襲撃したエレン。
マーレ軍の上層部、各国の要人を巻き込み、鮮烈な開戦の口火を切りました。

今回は、この行為によりパラディ島が得られたもの、そして失ったものを考察してきたいと思います。

得られたもの

1、ジークの身柄
真のエルディア復権派として、パラディ島へと働きかけていたジーク。
しかしマーレに一足先に潜入していたエレンでさえ、ジークと実際に会った描写が無いことから、マーレの戦士達への監視は非常に厳しいものがあったのでしょう。
収容区襲撃の混乱の中で、やっとジークのパラディ島への脱出が可能になった。
マーレの監視に隙を作る為だったとすれば、この襲撃の必要性は理解できます。

2、パラディ島の兵団の退路を断つ
ジークの寿命があと一年に迫った時点でさえ、一枚岩とは到底言えなかったパラディ島。
あくまでも和平の道を探る派閥と、新生エルディア帝国として武力を以て生存を図る派閥に分かれていたようです。
それがエレンの行動により強制的にとは言え、一つの方向性に纏まったのは事実です。
世界を敵に回した今、もはや兵団に残された活路は始祖の巨人の力しかありません。

3、地ならしの発動
始祖の巨人を継承するエレンと、王族の巨人であるジークが揃うことで、壁に潜む幾千万の巨人で世界を踏み潰す地ならしの発動条件が整いました。
これは現時点では間違い無く、世界最強の兵器となります。 本当に地ならしを運用出来るのなら、時間を稼ぐには十分過ぎる力と言えるでしょう。

失ったもの

1、和平への道
アルミンが主張していたような、話し合いによる和平の道。
大陸の国家の反エルディア人感情、エルディア人の巨人化という能力を考えると、可能性は低かったでしょうが、襲撃前は僅かながらその道も閉ざされてはいなかったかも知れません。
ですが、エレンが世界各国の要人を殺害した今、全世界は間違い無くパラディ島の敵に回りました。
エレンとしては、あえて和平の道を完全に断つことで、兵団をジークの案に乗るしかない方向に誘導したかったのだと思います。

2、調査兵団員の生命
マーレ軍との衝突により、調査兵団もサシャを含む複数の団員を失いました。
自分の選択で、同期で長い間、共に戦ってきたサシャを失い、しかし自分の選択の結果である以上、泣くわけにはいかないエレンの心情は、あの笑いに出ていましたね。


纏めると今回パラディ島は、和平への道を捨て、戦える力を得る事を選択しました。
アルミンは『何も捨てることが出来ない人には何も変えることが出来ないだろう』と言っていましたが、これは進撃の巨人という作品を通して語られるテーマのように思います。

エレンが捨て、そして選んだものは、どのような結末を齎すのでしょうか。

ハンジとエレン

冒頭はハンジとエレンの会話から始まりました。
ハンジの『私は確信していた。 君がヒストリアを犠牲にすることはないって……』という会話の通り、エレンも当初は、ヒストリアを巨人にすることに反対派だったようですね。
ですが他の打開策を見つけられないまま二年間の歳月が過ぎ、エレンもジークの案に乗るしかないと覚悟を決めたのでしょう。 ヒストリアはエレンにとって、女王というだけではなく共に戦ってきた仲間。
決断に至る過程はこれから語られるでしょうが、ハンジの言葉に対しての激しい感情から相当な葛藤があっただろうと推測されます。

アズマビト家との繋がり
初期からの伏線、ミカサが血を受け継ぐ東洋の一族の謎が明らかになりました。
アズマビト家との関わりがあることは予想していましたが、まさかその頂点に立っていた将軍家の末裔だったとは驚きですね。
ただ、それだけでアズマビト家がパラディ島に力を貸すことに決めた訳では無いでしょう。
実際、将軍家の末裔が生き残っているということはミカサに会うまでは確定していなかった訳ですし、可能性で動くには、世界を敵に回すリスクは取れません。

今回ジークによって言及された氷爆石
固体の状態で埋蔵されているガスで、それをボンベに詰めて立体機動装置の動力にしていることは前々から語られていました。

アズマビト家の目的は、この氷爆石にあると見て間違いありません。
ガスの具体的な成分は語られていませんが、燃料資源が物を言うこれからの時代、パラディ島と共倒れになるリスクを負ってもアズマビト家が欲しいと思ったガスというと……可燃性ガスと見るべきでしょうか?

採掘、運搬が用意な可燃性ガス。
これがパラディ島に莫大に埋蔵されているとしたら、確かに一大産業を興すことは可能でしょう。

エルディア人収容区からの脱出に使用した飛行船も、ヒィズル国が提供したと見て良さそうです。

ジークの真意、まだ裏がある?
今回ジークは、自分は両親の意思を受け継いだ真のエルディア復権派であり、マーレに摘発されそうだった両親と組織を売ったように見せかけることで、マーレ内により深く潜入することが目的だったと明かしました。

確かにそうすれば、自分が王族であることをマーレに話さなかったこと、両親を売ったこと、裏切った理由などには辻褄は通ります。
ただ気になるのが、かつてシガンシナ区でジークがエレンに言った『お前は親父に洗脳されている』という言葉の真意。 もしジークが本当にグリシャの思想を全て受け継いでいるのなら、この言葉は出てこないでしょう。

ただジークがマーレに忠誠を誓っている訳でも、エルディア人の滅亡を願っている訳でも無いことは断定していいと思います。
そうでなければ、わざわざマーレを裏切る理由はありません。

これについては、エレンとジークが出会った時がターニングポイントになりそうですね。

パラディ島を救う『秘策』
今回明らかになったジークの秘策。 それは、三つの要素から成り立つ作戦でした。

一つ目が『地ならし』を部分的に発動させ、世界へとデモンストレーションを行い抑止力とする。
アルミンやハンジの理想では、誰も犠牲にせずに世界と和睦の道を探りたかったのでしょうが、その可能性はエレンの各国要人の襲撃で無くなりました。
とは言え、エルディア人はマーレのみでは無く、ヒィズル国以外の多くの国で過酷な差別を受けていた様子。

軍事力の後ろ盾無しに交渉しても到底上手くいくとは思えないので、どのみち地ならしは必要だったでしょう。
ヒストリアや、その子孫達を犠牲にする選択肢ではありますが、確かに現時点では一番有効な計画と言ってもいいと思います。

二つ目が地ならしが抑止力として効果を持っている内に、ヒィズル国の力を借りて、新生エルディア帝国を世界と渡り合える水準の国家へと引き上げる。

ここで気になるのがキヨミ・アズマビトが強固な国力の土台を作るために必要と言っていた要素。
教育、外交力、経済力、そして人口。
教育と外交力は、ヒィズル国の協力があれば得られるでしょうし、経済力も資源を輸出すればいい。
問題は人口です。

パラディ島の総人口は、250万人前後。
これでは幾ら出産を促す政策を打ち出しても、五十年で世界でも存在感のある規模の国を作ることは難しいでしょう。
そこで重要になるのが、大陸のエルディア人をどうやって取り込むか、そして彼らを住まわせる国土をどうやって確保するか。
ジークもここに気がつかない筈はありません。
この二つの問題をクリアする策はあるのでしょうか。


三つ目が地ならしを常時発動できるようにする為、王族の巨人を維持し続けること。

歴代の王族がしてきた事を、ヒストリアも継承するということですね。
現時点では、ヒストリアは巨人にはなっていないでしょうが、ジークが寿命を迎える一年以内には獣の巨人を継承する必要があります。

ハンジは未だ割り切れていない様子で、恐らくはヒストリアの同期の大半がそうでしょう。
しかしヒストリアは王としての責務を果たすために使命を受け入れ、エレンはそうするしかない方向に兵団を引き込みました。 


ヒストリアの結婚相手は?
ヒストリアは立場的には女王とはいえ、実権は兵団が握っています。
しかし民衆の指示も厚く、自分達が実権を握ることの正当性を担保しているヒストリアを粗末に扱うわけには行かないでしょう。

兵団の介入はあったでしょうが、あくまで結婚相手自体はヒストリアが選択したと思います。
今回出てきた相手の後ろ姿から、恐らく新しい登場人物。

これが普通の国ならば、政略結婚の必要性などである程度候補は絞れたのですが、パラディ島の特殊な社会構造を考えると、予想が難しいです。

パラディ島の貴族は、かつてのエルディア帝国の貴族では無く、他民族であり始祖の能力が効かないので、エルディア人を管理することを条件に貴族になっただけ。
新生エルディア帝国では、血縁的には自分達の同胞では無い貴族の立場は、微妙なものになっていると思います。

そしてヒストリアとしても、結婚相手と作った子供の内誰かは将来巨人にしなければならないのですから、楽しい恋愛結婚など出来るはずも無し。


こればかりは、新しい情報に期待するしかありません。


エレンの同期でもある、コニー・スプリンガーの故郷ラガコ村。
ウォール・ローゼ内に突如として出現した巨人達は、巨人化させられたラガコ村の住民達でした。
彼らが元となった無垢の巨人達はジークの命令を聞いていたことから、ジークの脳脊髄液から生成した薬品により巨人化したことは間違いないでしょう。

しかしここで謎が残るのは、ジークがどのように村民達に脳脊髄液を摂取させたか
今回は、その顛末について推測していきたいと思います。

可能性1:ジークに脅され、村民達が自分で薬品を注射した。

これは薬品を摂取させる手段が、現在描写されている注射によるものだと仮定した場合です。
一番手っ取り早いのは、ジークが村人達を脅し、巨人化薬を自主的に注射させること。
勿論、打てば巨人化すると知っていれば躊躇うでしょうが、それを伏せた上で、巨人化したジークが脅せば、可能ではあると思います。

ただ問題点も……。
ラガコ村には、人が殺傷され血を流したような痕跡が一切ありませんでした。
ということは、村人全員が抵抗することも出来ずに巨人になったということ。 ジークが脅しても、やはり一人二人は逃げようとする村人も出るでしょうし、その場合ジークは情報漏えいを防ぐために逃走者を排除しようとするでしょう。 だとすれば、この手段では無血での村人全員の巨人化は難しそうです


可能性2:ジークとピークが夜にこっそり忍び込み、寝ている村民に注射を打った。

これは流石に無いでしょう。
そもそもいくら眠っているとはいえ、針で刺されれば当然目を覚ますでしょう。
騒ぎを起こさずに村人全員に注射をすることは、流石に無理ですね。

可能性3:睡眠薬を村民に飲ませ、一時的に村民の意識を奪い、その間に注射した。

井戸水や食料に睡眠薬を混ぜ、昏睡している村民に巨人化薬を注射したという可能性です。
単純に忍び込むよりは可能性がありそうですが、これも難しそうです
そもそも睡眠薬は、効果が人によってまちまちですし、確実に村民全員が摂取する可能性は低いでしょう。
もし対象が数人程度の集団ならば、やる価値はある作戦かも知れませんが、少なくとも数十人規模の村を相手にするには確実性に欠けると思います。

可能性4:巨人化薬そのものを飲料水に混入。 村民全員が摂取した頃を見計らってジークが巨人化させた。

巨人化薬は空気に触れると気化するそうですが、水の中ではどうなるかは語られていません。
マーレから持ち込んだ大量の巨人化薬を井戸水に混入させたとすれば、一日二日あれば確実に村人全員に巨人化薬を摂取させることができるでしょう。 
自分の脳脊髄液を摂取した相手を任意のタイミングで巨人化させることが出来るジークなら、無血で村人全員を巨人化させることも可能です。
問題は、巨人化薬を摂取した場合、自覚症状があるのかないのか。

大陸編でのスラバ要塞攻略戦で、飛行船から投下されたユミルの民達は、意識が朦朧としている様子でした。
あれが巨人化薬の作用によるものならば、流石にラガコ村の住民も初期の段階で飲料水に何か有害な物質が入っていると気が付くでしょう。
ですが、巨人化薬自体には自覚できる作用は無く、飛行船のユミルの民は、抵抗を封じる為に麻酔薬のようなものを打たれ意識が朦朧としているならば、この仮説は成り立ちます。

ですが飲料水に混ぜ、それを経口摂取させるだけで巨人化の条件を満たせるなら、とてつもない脅威ですね。
ジークがその気になれば、更に大規模な事態を発生させることも出来たということですから。


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